定期演奏会の紹介

第31回定期音楽会の紹介

 第31回定期 関西合唱団音楽会

演奏日時 1975年7月25日(金)午後6時・26日(土)午後2時30分開演
演奏会場 フェスティバルホール
指   揮 外山雄三/守屋博之
桜井武雄/守屋博之(合唱指揮)
オーケストラ 大阪フィルハーモニー交響楽団
ピ ア ノ 山口美佐子/根来博子/吉川真知子
松永勇次/吉田親家(アコーディオン)
出   演 関西合唱団/フロイデ合唱団
主   催 交響曲「炎の歌」大阪公演実行委員会/関西音楽舞踏会議/
関西合唱団/原水爆禁止大阪府協議会/新音楽協会/フロイデ合唱団
後   援 大阪府/大阪府教育委員会

演 奏 曲  1部 【守屋博之(指揮)/大阪フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)】

映画「クバンのコサック」より序奏と収穫のうた      (曲:ドナエフスキー)
橋をつくったのはこのおれだ                (曲:トム・パクストン)
シェリトリンド                         (メキシコ民謡)
シャンテ                            (曲:ジルベール・ベコー)
夜明けの歌                          (曲:いずみたく)
シュワジベチカ                         (ポーランド民謡 編曲:関西合唱団)
青山里の野に豊年がきた                  (曲:キム・オクソン)
リリーマルレーン  シングアウト

白鳥                              (曲:サンサーンス)
解放区の春                          (曲:フオン・ホン)
母なるヴォルガを下りて                   (ロシア民謡)
夕べのつどい                         (ロシア民謡)
ロシア                              (曲:ムラジエリ)
ぼくらの街のうたーふるさと大阪のためにー       (曲:上田忠喜)
すばらしい明日のために                   (曲:熊谷賢一)

        2部 【外山 雄三(指揮)/大阪フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)】

混声合唱とオーケストラのための交響曲
「炎の歌」 (詩:土井大助 曲:外山雄三)

メッセージ

プログラムより
【大阪府知事 黒田了一】
交響曲「炎の歌」大阪公演にあたって
 本年は、あの忌わしい原爆が広島・長崎に投下されて以来30年になりますが、今日なお、後遺症に悩む方々が多くおられますことは、痛恨の限りであります。
 このたび、在阪の音楽関係者が中心となって実行委員会を組織され、被爆問題をテーマとした交響曲「炎の歌」の大阪公演が三たび実現しましたことは、誠に意義深いものがあると思います。
 一人でも多くの方々が音楽を通じて平和の尊さを再認識されることを願うものです。


【交響曲「炎の歌」大阪公演実行委員会 委員長 柴田仁】
「炎の歌」上演にあたって
 広島・長崎が原爆を被爆して30年になります。
 1970年に、外山雄三氏がヒロシマの被爆をテーマにした交響曲「炎の歌」を発表してからこんどで三度目。大阪では再々演をおこなうことになりました。音楽を通じて、日本人の被爆体験をかみしめるような気がします。ことしはその広島でも演奏されますが、わたしたちは心の奥深く、うずきを覚えないでこの曲を聞くことができません。日本人の核の問題を、その胸のうずきの中で、また考え深めてみたいと思います。一人でも多くの人が「炎の歌」を聞いて下さることを願ってやみません。


【土井大助】
大阪再々演によせて
 合唱団のほとんどの方は、「戦争を知らない子供達」といわれる世代に属する。体験のないものが戦争を告発できるだろうか、という疑問が出されたという。
 だが、相変わらず核をふりかざし戦争をちらつかせる指導層は、みな戦争体験世代に属する。体験はさまざまであり、教訓も一様でない。体験は必ずしも告発につながらない。
 また、未体験の世代が告発で無能だとしたら、世界は永遠の戦争反復を容認することになるだろう。「戦争体験なし」の若い層にこそ、戦争の実態ととりわけ核兵器の正体は知らなければならないはずである。
 日本人の私らが現代世界にむかって人間的にものがいえる最も切実なテーマは、30年前の被爆という事実をぬきにしては成り立ちえない。これは歴史的事実であり、同時に現代進行中の最大の全人類的課題に拘っている。
 「炎の歌」は東京・大阪・名古屋・神戸のあと8月6日に広島で上演される。とりわけ制作初演の大阪での成功が期待される。


【外山雄三】
 今度、合唱に参加して下さった皆さんには、大江健三郎著「ヒロシマ・ノート」(岩波新書)と井伏鱒二著「黒い雨」(新潮社)を、パラパラッとでもいいから読んで頂けないだろうか、とお願いしました。児玉隆也著「君は天皇を見たか」には、広島で被爆し、現在同地で飲み屋のママをしている女性からの聞き書きがあります。
 『うちゃあ、忘れとうないのです。あのことは、死ぬまでしっかり握りしめて、金輪際忘れちゃいかんのです。うちら被爆者は、よう聞かれます。「8月になると思い出しますか?」へっ、へも候。思い出せるくらいなら楽というもの。うちには“思い出”やない、いまのいままで地獄は続いとります。』
 森有正対話集「言葉・事物・経験」の大江健三郎氏との対話の中には次のようなところがあります。森「新憲法はアメリカがつくったかどうかは、問題じゃないですよ。これはどうしても守らなくちゃいけないと思う。主権在民と軍備の拒否ですね。これは根本的な問題で、将来の日本は、ここから決定していかないと、もとも子もない、ほんとにめちゃくちゃになっちゃうと思うんです。(中略)あの戦争に直結した感覚からいったら、どうしてもあの憲法でなきゃ困る、そう思った気持をもうみんな忘れているんですよ。」大江「そういうことを言うことが、子どもじみたことか、しろうとの考え方だという言い方があるんですが、結局、20年間、新憲法について議論を雑誌ジャーナリズムが繰り返しているうちに、だんだん専門的な言い方が求められて、それは思想的にだんだん頽廃していくということじゃないかと思うんですよ。そういうことがあるために、いちばん基本的な点、お前は自分の生死を賭けて憲法とどうかかわるのか、ということを問う習慣がなくなった…。」
 決して忘れてはならないことを忘れないために「炎の歌」が少しでも役立ちますように。

「炎の歌」の紹介

プログラムより
 原爆投下から25年たった1970年、大阪労音(現新音楽協会)20周年記念作品として作られた曲です。
 土井大助の詩、外山雄三の曲で、全体は「安らかに」「T.鐘」「U.炎」「V.石」「W.花」から成っています。「安らかに」は慰霊碑の碑文字「安らかに眠って下さい過ちは繰返しませんから」です。
 作曲の外山氏は初演の挨拶に「詩人 土井大助さんと私の共通した願いは、ヒロシマやナガサキで行われた私たちの常識や正常な感覚や知識をはるかに越えた無残な破壊を、決して再び繰返させてはならぬ、ということです」と書いています。
 世界でたったひとつの被爆国であり被爆民族である私たちは、世界に向ってこうした悲劇を二度とくり返さないように訴える責任と義務があります。
 美しく素晴しい詩、美しく力づよい曲で、一見平和にみえる社会の中で、戦争の影がしのび寄ろうとするとき、今こそ風化させず、遠景色としないために三たびうたいあげるのです。