定期演奏会の紹介

外山雄三指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団・大合唱による

交響曲「風雪」演奏会の紹介

 この国の大ぜいの人たちがいまたしかなシグナルを求めている
 日本のうたごえ運動創立30周年記念演奏会

演奏日時 1978年 5月26日(金)午後6時30分開演
演奏会場 大阪厚生年金会館大ホール
指   揮 外山雄三
守屋博之/本並美徳/細川幸治
ピ ア ノ 根来博子
吉田親家(アコーディオン)
オーケストラ 大阪フィルハーモニー交響楽団
出   演 成田絵智子(メゾ・ソプラノ)/伊藤力雄(バス)/
関西合唱団/「風雪」大阪合唱団
主   催 交響曲「風雪」大阪上演実行委員会

演 奏 曲  1部 【関西合唱団(合唱)/吉田親家(アコーディオン)/根来博子(ピアノ)/
 守屋博之(指揮)/大阪フィルハーモニー交響楽団(オーケストラ)】

合唱

私のインドネシア                     (曲:イスマイル 編曲:芥川也寸志)
美わしのキューバ                     (キューバ歌曲)
タルーの音はひびく                   (曲:フィ・トウック)
祖国                            (曲:キム・ヒョック)
勇敢なケイシー・ジョー                 (曲:ジョー・ヘンリー)
兵隊が戦争にいくとき                  (曲:ルマルク)
ワルシャワのポロネーズ                (曲:シゲティニスキー)

オーケストラと合唱による

「わが母のうた」                    (編曲:木下そんき)
一荒木栄のおもいでに一
 心はいつも夜明けだ/五月のうた/この勝利ひびけとどろけ/花をおくろう/わが母のうた/

「春の使者」                        (詩:金子静江 曲:木下そんき)
一ベトナム歌劇団訪日を歓迎して一

        2部 【関西合唱団/「風雪」大阪合唱団(合唱)/守屋博之(合唱指揮)/
 独唱:成田絵智子(メゾ・ソプラノ)/伊藤力雄(バス)/
 外山雄三(指揮)/大阪フィルハーモニー交響楽団(オーケストラ)】

交響曲
「風雪」                    (詩:土井大助 曲:外山雄三)
 序章 吹雪
 第一章 連結手
 第二章 激突
 第三章 追悼
 第四章 夜
 第五章 風
 終 章 道

チラシ(表)

ごあいさつ

プログラムより
 交響曲「風雪」は、現代日本のすぐれた詩人土井大助氏と作曲家外山雄三氏に、国鉄のうたごえサークル協議会のみなさんが協同して、国鉄の職場のなかから、国鉄労働者の斗いをうたいあげた、すばらしい交響曲です。
 国労結成三十周年を記念して、昨年八月新潟で開催された第三十九回全国大会の前夜に初演されました。私は、この初演を聴いて、大きな感銘を受けました。この曲は私達の三十年に亘る斗いの一こま一こまが、壮大な交響曲と合唱によって、感動的に表現されています。苦しかったマル生の斗い、中川委員長を始め多くの仲間の死を乗り越えた斗い、そして九日間のスト権ストを斗う団結と力量をつくりあげてきた源を、この交響曲は見事に表現しています。
 私達の前途には国鉄再建・スト権奪還など多くの課題があります。この斗いに勝利し前進するためには文化・思想の斗争が重要であります。文化・思想の斗いは労働者自らが労働者文化の創造と発展をしてゆくことに意義がありますが、その意昧で交響曲「風雪」が労働者の手によって作られ、その演奏会が成功をおさめることは非常に意義深いものがあります。交響曲「風雪」の成功が全ての労働者の斗いを励ますものとなることを期待します。
【国鉄労働組合大阪地方本部斗争委員長 交響曲「風雪」大阪上演実行委員長 奥村弥治右衛門】

メッセージ

プログラムより
 戦後の荒廃のなかで生れたうたごえ運動が、今年で三十周年を迎えます。その歩みは一口でいえば、音楽の力で私たちの生活とたたかいをはげまし、つねに未知の課題に挑戦し苦斗しつつ、日本の夜明けへの確信の灯をともしつづけた三十年でした。その最新の巨大な道標が交響曲「風雪」です。
 これは、国鉄労働者・詩人・音楽家の触発と協同が生んだ、世界にも稀な「職場労働者のたたかいをえがく交響曲」です。同時にこの曲は、うたごえ三十年の蓄積を支えとし、さらに発展させている点でも、まさに七十年代の「地底の歌」といえましょう。
 創立三十周年の関西合唱団を先頭に、大阪のうたごえによる今回の上演が、八十年代へのあらたな高揚の第一歩にふさわしい輝やかしい成功をおさめることを、確信し期待します。
【日本のうたごえ運動30周年記念委員会会長 井上頼豊】


 なだらかな美しい日本語で、すべてをはっきりと語ることが特色である土井大助さんの作品に音楽をつくるのはこれが初めてではないが、この「風雪」ほど作品の完成までに曲折があったことは珍しい。単なる闘争絵巻にするなら他に適任者がある筈だ、という考えでは始めから二人は一致していたのだが、特に「激突」と「夜」が土井さんの思いが仲々言葉として定着しなかった。くるしんで仕事をして居られるようにみえた。音楽がつき何度か演奏してみると、矢張この二つの部分にやや問題が残る。初演以来5月11日の名古屋まで「序奏」「吹雪」「連結手」「激突」、そして「夜−風」「追悼」「道」という順序で演奏してきたが、今夜は「激突」の次にすぐ「追悼」を置き、「夜−風」と動きがそのまま「道」へつながるようにしてみた。その点を含めて作品全体についてきびしい御批判を項ければ幸である。
【作曲家 指揮者 外山雄三】


 交響曲「風雪」の作詞は、外山雄三さんの創作曲に協力させていただいたわたしの三つ目の大きな仕事でした。
「炎の歌」が大阪でつくられたということもあって、外山さんとのここ十年にわたる仕事のなかで、大阪はわたしにとってもっとも因縁ふかい土地となっています。その大阪での「風雪」上演ですから、期待もひととおりではありません。
 ひとつは、大阪であの曲がどう歌われ、大阪の人たちの心にどうひびくかということ。昨年国鉄労働者やうたごえの人たちの並大抵でない熱意と努力によって初演されたこの曲は、いわば雪国(新潟と山形庄内)生まれといえますが、そこに日本中にひろがりうることばと心がどう生きているか。それが大阪で大きく試されるような気がするのです。
 もうひとつは、初演から九カ月後、どんな大阪らしいホットな声にのってあの曲が鳴りひびきうるかということ。守屋博之さんほか合唱団のみなさんの成果に、わたしは触発され鞭撻されたい気持ちでいっぱいです。
 まっとうに働きまっとうに生きている人たちの希望が、この「風雪」の歌声にのって、大阪というだいじな土地でもよりおおくの人びとの心と心を深く結びつけますように。
【作詩者 土井大助】

プロフィール

プログラムより
外山雄三(指揮)
も 1952年、東京芸術大学卒業後、直ちにN響指揮者に就任。1960、64、66年のN響海外演奏旅行に同行、また63年から大阪フィルの指揮者を兼任した。67年3月N響、大フィルを辞任、京都市交響楽団の常任指揮者となり70年までその任務にあった。
 また、ソ連、ルーマニアなどヨーロッパ諸都市で、オーケストラを指揮している。
 作曲家としても活躍し、63年度尾高賞受賞作である「ヴァイオリン協奏曲」や、ロストロポーヴィッチの委嘱による「チェロ協奏曲」などがある。


成田絵智子(メゾ・ソプラノ)
 東京芸術大学卒業。平原寿恵子に師事。続いて《リゴレット》のマッダレーナでオペラ界にデビュー。以後、数々のオペラに出演。60年《カルメン》のタイトル・ロールを演じて絶賛をあび、「カルメン歌い」として名声も加わり大きくクローズ・アップされた。その後も日本では珍らしい大型歌手として、藤原歌劇団の中心的存在として活躍する他、コンサート歌手としても幅広い活躍を続けている。67年には日韓親善公演オペラ《カルメン》に参加し大好評を得、68年には第1回藤原歌劇団賞を受けている。71年夏、二期会公演オペラ《ホフマン物語》に出演し、ジュリェッタを演じ異彩をはなち、翌72年3月二期会に入会。75年の《カヴァレリア・ルスティーカナ》のサントゥッツァでも好演している。二期会会員。
伊藤力雄(バス)
 1928年山形県酒田市に生れる。鶴岡工業高校卒業後、国鉄新潟局電気部へ就職、酒田車電区へ転勤と同時に『酒田ボーカルスタジオ』に加入し加藤千恵氏に師事。1953年、藤原歌劇団・ボーカルスタジオ共演の『蝶々夫人』の山形県公演で神主の役を演じ好評をうる。1955年前記共演で『フィガロの結婚』を京都で公演しフィガロを演じ絶賛をうる。また1953年うたごえ運動を酒田に組織し、翌々年うたごえ代表としてワルシャワの世界青年平和友好祭に参加、その後国鉄新潟合唱団団長をはじめ酒田市の多くの文化運動に関与している。


大阪フィルハーモニー交響楽団
 大阪フィルは昭和22年、朝比奈隆を中心とした音楽家の集まりによる関西交響楽団の活動に始まった。以後、大阪フィルに改組された昭和35年まで関響時代が続いた。この歴史の長さは日本有数のものであり、その間、一貫して朝比奈が常任指揮者を勤めているのは特筆されよう。
 大阪フィルに改組されてからは、欧州よりコンサートマスターを招くなど、たゆまざる努力と研鑽を積み、その成果は着々と演奏向上につながった。海外一流アーティストとの交流も多く客演した音楽家の中には、イッセルシュテット、シェリング、スターン、アシュケナージ、ロストロポービチ、ルビルシュタイン、ケンプなどの名が見られる。 常任指揮者 朝比奈との30年の結びつきは、他のオーケストラに見られない強固なものがあり、特に、ブルックナー、マーラー、R・シュトラウス、べートーベン、ブラームスなどの演奏には高い評価を得ている。特に昭和50年秋に行われた欧州公演では、スイス、ドイツなどで20回の公演を行い、圧倒的な讃辞を得て帰国し、大阪フィルの大きな飛躍として注目されている。指揮陣は朝比奈のほか、内外で目覚しい活躍をしている秋山和慶と手塚幸紀が指揮台に立っている。
大阪フィルは現在4管編成90余名のメンバーを有し、常に魅力あるオーケストラとして全国各地で活動を続けている。


関西合唱団
 1948年創立以来、年2回の定期演奏のほか大小のミニ音楽会、学校公演、うたごえ喫茶など年間公演百回を越す。
 大阪のうたごえ運動をすすめる合唱団として活動、6カ月間の研究生、教室卒業生は約1万5千人を越えている。また、他の音楽団体、専門家とも協力し、新音楽協会例会にもたびたび出演。合唱のほかアコーディオン、ギター、ピアノなどの器楽、民謡、ポップス・ボーカルなども追求している。