定期演奏会の紹介

第53回定期音楽会の紹介

 創立40周年記念

演奏日時 1988年10月12日(水)・13日(木)午後6時30分開演
演奏会場 森ノ宮ピロティホール
指   揮 守屋博之/本並美徳/細川幸治/山本恵造(レガーテ)/吉田親家(アコーディオン合奏)/
三条場康則(OB合唱団)
ピ ア ノ 門万沙子/山下和子
出   演 開西合唱団/40周年音楽会記念合唱団/関西合唱団レガーテ/
関西合唱団アコーディオン班/関西合唱団民謡班「わだち」/関西合唱団OBの会
ス タ ッ フ 一杉忠(舞台監督)

演 奏 曲  1部 プロローグ
【ダンス】 イッツア・スモール・ワールド、一週間、サンバ、八木節、
【郷 土】 秩父屋台ばやし

いい日旅立ち                (詩・曲:谷村新司 編曲:久石譲)
メモリー                    (訳詩:浅利慶太 編曲:源田俊一郎)
子守歌                    (訳詩:浅利資子 編曲:木下牧子)
星に願いを                  (詩:N.ワシントン 曲:L.ハ一ン 編曲:青島広志)
ハイホー・ハイホー             (詩:L.マレイ 曲:F.チヤーチル 編曲:青島広志)
<みんなでうたおう> 
 ピースウェーブ              (詩:橋本のぶよ 曲:松永勇次)
 遠い世界に                (詩・曲:西岡たかし)
<アコーディオン合奏>
 荒木栄メドレー               (編曲:吉田親家)
 茶色の小瓶                (アメリカ民謡 編曲:川口裕志)

        2部 雨の音楽                  (詩:J.S.コックJr 訳詩:木島始 曲:林光)
十二月のうた                (詩:S.マルシャーク 訳詩:湯浅芳子 曲:林光 編曲:青島広志)
太陽の旗                  (詩・曲:林光)
ねがい                    (詩:佐藤信 曲:林光)

合唱組曲
「よく似た日々のくりかえしだけれど」(詩:佐伯洋 曲:中村茂隆)
 一章 一本の樹に一つの木陰
 二章 よく似た日々のくりかえしだけれど
 三章 かけがえのないひとり一人
 四章 笑顔をありがとう
 五章 少年は木漏れ陽の森で

        3部 鶴                       (詩:R.ガムガトフ 曲:Ya.フレンケリ 訳詩:坂山やす子)
あなたとわたしと花たちと         (詩:峰陽 曲:小林秀雄)
バイカル湖のほとり            (ロシア民謡 訳詩:中央合唱団 編曲:井上頼豊)
みんなは夜明けを待っている      (詩・曲:豊田光雄)

交響曲「風雪」より             (詩:土井大助 曲:外山雄三)
 序 章  吹雪
 第二章 激突
 第二章 夜・風
 終 章  道

チラシ(表)

ごあいさつ

プログラムより
 本日は、お忙しいところ、ようこそおいでくださいました。
 関西合唱団が創立されて今年は40年。大阪に住み働く人々の生活とのたたかいは、私達の音楽をいつも厳しく育てあげてくれました。そこにある切実な願いにどう応えていくのか、どんな音楽が求められているのか、この原点をしっかり見つめ、専門音楽家や詩人の方々の暖かい協力が一層豊かで底の深い音楽的広がりをつくり、音楽を通して共感の輪を一歩一歩大きくしてきたと言えます。
 この5月には、同じく40周年を迎える中央合唱団・名古屋青年合唱団との合同演奏会を大成功させ、9月には各界の代表やOBの皆さんと40周年のレセプションを開くことが出来ました。
 来年2月には、全国でくり広げられている40周年運動の全ての蓄積を結集して、日本武道館を中心に「日本のうたごえ祭典」が開かれます。同じく「大阪のうたごえ祭典」も3月18日に計画されています。こうした運動を土台にして、次の50周年に向って新たな歩みを踏み出していかねばなりません。平和、民主主義、くらしにおいて歴史の流れに逆行する様々な動きは、私達のうたごえを今までにも増して求めています。
 私達は、人々と心を固くむすび、サークル・合唱団の仲間としっかり団結して、うたごえ運動の前進に全力をあげていく決意です。皆様の今日までの御支援に心から御礼申しあげますと共に、今後の御協力をさらにお願いし、ごあいさつにかえさせて頂きます。
10月12日 【関西合唱団団長 西恒人】

メッセージ

プログラムより
 うたごえ運動は、今年創立40周年を迎えましたが、この40年の歴史を振りかえる時、うたごえ運動の今日の発展は、まさしく日本の平和と社会進歩を願う大勢の人びととしっかり結びあい、育くまれながら前進してきたといえます。
 「原爆を許すまじ」「しあわせの歌」「がんばろう」のうたをはじめ、すぐれた国民的愛唱歌が運動の中で生み出され、うたいひろげられてきました。これらのひとつひとつのうたが、ひとつの命となって、どんなにか人びとを勇気づけてきたことでしょう。
 そして今、全世界で高鳴る平和の波の中で、また日々のくらしの中で、平和と人間の尊厳を高らかにうたううたごえが強く求められています。関西合唱団の輝かしい40年の歴史と伝統の上に、「うたごえよ更に高なれ」の新たな期待に応えるべく、明るく力強く奮斗されん事を心から願うものです。
 演奏会に参加された皆さんと関西合唱団員の皆さんに心からの連帯をこめて。うたごえは平和の力!
【日本のうたごえ協議会 幹事長 浜島康弘】


 40周年、おめでとうございます。
 関西合唱団は戦後の年月、たゆまず音楽創造に努力され、大阪の音楽文化水準を飛躍的に高める役割を果たされました。
 同時に大阪の民主的運動に大きく寄与され、つねに大衆とともに歩んで来られました。特に印象深いのは、'87年の大阪府知事選挙において、その美しく力強いハーモニーに大いに励まされたことが、今も胸によみがえります。
 私は大阪を文化の薫り高い都市に再生することが、府民の幸せのための大きな柱と考えます。大阪は働くだけのまちとして位置づけられ、人の心に不可欠の文化や芸術が軽視されて来ました。その結果が潤いも味わいもないこのまちのありさまです。
 これは、財界や大企業の意を体した自民党主導の大阪府・市政が人のくらしを無視した乱開発を推進して来た結果です。
 大阪のまちに緑を増やし、清流をとりもどして文化施設を充実させ、アメニティの高い都市につくりかえねばなりません。そうしてこのまちで文化活動が生き生きと輝けば心豊かな日々が生きられるでしょう。
 私はそうした大阪をめざし、府政革新に向けて、これから奮闘いたします。関西合唱団の歌声がさらに大きく大阪のまちに響くことを期待します。
【都市計画家 角橋徹也】


 おめでとう。うたごえ40年共に歩んできた中で、心を深くゆり動かした歌の数々がありました。ナホトカで聞いたシベリア山林労働者の「バイカル湖のほとり」、ワルシャワで聞いたマゾフシエのマズルカとポーランド民謡、ヘルシンキ平和友好祭で聞いたベトナムの笛の独奏・小鳥の歌、アフリカのタイコ、日本のうたごえ祭典で聞いた日本のタイコ「おすわだいこ」、「えのめのえびすたいこ」、「秩父ばやし」。北海道沖揚音頭、広島県庄原の田楽。関西で初演された「森の歌」、「砂川の歌」、「黄河大合唱」、「俺達の職場から」、「永遠のみどり」、「光れ中学生」・・・・・・・・。
 これらの感動の芯にあったものは何んだろう。それぞれの民族の生活とたたかいに深く根ざし、「日常のトレーニングをどうつみ重ねることで周囲の要求にこたえようとしているのか。その内容が音楽と運動の質を決定してるとおもいます。・・・・関忠亮」
 創造活動は10年1期、30年1期の息の長い仕事であり、「ゆっくり、じっくり」共にがんばりましょう。
 13年目に「地底のうた」が生まれ、21年目に「歌劇沖縄」、33年目に「永遠のみどり」、39年目に「世界でいちばん大きな花は」………。
 こうみてくると、うたごえ運動が大きく発展していくのは、むしろこれからではないでしょうか。
 東ドイツの国民的スポーツ運動のような、専門家の協力と共に、この国の最底辺から層厚く構築されていく大衆的音楽運動が真の多様性、現代性、個性の花を咲かせていくでしよう。
【元関西合唱団団長 宝木実】

メッセージ

プログラムより
作者よりのメッセージ

 一般に「知恵おくれ」といわれる子らに寄りそった歌は、「いままで無かった」と言ってよいのではないのでしょうか。身体障害、車椅子の人への思いを託した歌は、いくつか聞いたことがありますが……。
 組曲「よく似た日々のくりかえしだけれど」は、「知恵おくれ」といわれる、養護学校に学ぶ子ら、そしてその父母のみなさんの姿に学びつつ生まれた作品です。
 一章は、福祉や民主主義の成長をねがって。
 二章は、子どもの成長に目と心をそそぐ親心。それはどんな親の子も同じです。
 三章は、ときにはくじけそうになりながらも、少しずつ強くあかるく生きてゆきたいとの熱い思いを託して。
 四章、よろこんで学校へ行ってほしいとの親心。それに「子どもは内側に無限の可能性をもっています」との教職員の確信とはげましをかさねあわせて。
終章に、いのちの尊さ、自立に向かうかがやきを自然のなかでとらえたいと「少年は木漏れ陽の森で」をうたいあげます。
いま、日本中の子どもの、いのちへのめざめ、明日を生きる希望をむすびあわせたいと、切実にねがいます。
 関西合唱団の創立40周年記念作品として「よく似た日々のくりかえしだけれど」の詩を提出させていただいたこと、心から光栄に思っています。さらに、地域と職場に根ざして、誠実に生きる人間の心をうたってください。
 きびしい現実にたちむかって生きる姿のうちにこそ、明日をつむぎだす展望の原型があります。
 関西合唱団は、日本のうたごえ運動全体のなかでも先進的な、こころづよい存在です。きたる50周年への歩みを充実されるようにと祈ってやみません。
【佐伯洋】


 関西合唱団40周年記念定期演奏会の開催おめでとうございます。
 このたびの記念演奏会に、佐伯先生とのコムビで新作を書かせていただくことになった時、私はできれば精神発達遅滞の子供達の問題をテーマにとりあげてもらえないか、と提案しました。
 というのも、私は現在神戸大学教育学部附属養護学校の校長を併任しており、その中で思うことがあまりにも多いからです。
 この提案は受け入れられ、早速、佐伯先生と西さんに私達の学校へ来ていただき、子供達と給食をともにし、お母さん達と話し合っていただきました。というのも、同じ障害児でも肢体不自由児の場合と違って精神薄弱児の場合は、本人の意志表示が大変困難なため、そういう子供達をかかえた親の思いや願いを聞くということが中心にならざるを得ません。従ってその表現は大変難しく、肢体不自由の障害児・者のことを歌った作品は多いが、精神薄弱児・者を扱ったものは今までほとんどなかったのではないかと思われます。
 さて、お母さん達は明るく淡々と子供達との生活を語られ、佐伯先生はかえってその重さに圧倒されたようでした。話し合いの後で、私達が同和地区のお母さん達の思いと願いをまとめて、昨年発表した合唱組曲「世界でいちばん大きな花は」のテープを聞いてもらったところ、そこに歌われた思いは、そのまま私達障害児をもつ親達の思いだという声が出たのは、私にとって新しい発見でした。
 佐伯先生は、その後、身近な障害児教育・福祉の関係者からも取材され、第一稿ができ、私も関係者のひとりとして意見を述べ、障害児教育に携わる教師達の思いも加えてもらい、細部に修正を加えて作曲しました。完成した楽譜のコピーを本校の育友会の会長さんにお渡ししたところ、「よく似た日々のくりかえしだけれど」というタイトルが、まったく親の思いそのものをズバリ語っていると、大変喜んで下さいました。
 障害児教育専門の研究者に聞いたところでは、先進国において精神薄弱児の生まれる確率は(自閉症を除いて)50人に1人とのこと。となると、これは一部の関係者に限定された問題ではなく、わたしにも、そしてあなたにも、ともに関わる問題ではないでしょうか。
 いつも心に戒めているように、音楽は音楽であり、それ以上でも以下でもありませんが、この合唱組曲が「よく似た日々のくりかえし」の中で、ともすれば落ちこみそうになる人達をどこかで支え励ます力になり、同時に少しでも広く、多くの人々が障害児・者に目を向けて下さるきっかけともなればと、ささやかに願っております。
終わりに、関西合唱団40周年記念定期演奏会のご成功を心からお祈り致します。
(1988.9.29) 【中村茂隆】