定期演奏会の紹介

第56回定期音楽会の紹介 

 5月の音楽会

演奏日時 1991年5月23日(木)・24日(金)午後7時開演
演奏会場 森ノ宮ピロティホール
指   揮 守屋博之/山本恵造
ピ ア ノ 門万沙子/山下和子
三好良(ドラムス)/上里明(ベース)/門万沙子(シンセサイザー)
出   演 関西合唱団/「光の種子をまくとき」「空に小鳥がいなくなった日」を歌う合唱団/
レガーテ/フリーダム/関西合唱団アコーディオン班
ス タ ッ フ 一杉忠(舞台監督)

演 奏 曲  1部 風よ未来へ                  (詩・曲:小島啓介 編曲:赤堀文雄)
Hard wave                   (詩・曲:きたがわてつ 編曲:青山義久)
離陸準備完了                 (詩:大谷大学とんぼ 編曲:西良三郎)

ふるさととよべるまちを            (詩:上二病院有志 曲:原田義雄)

G線上のアリア                (曲:J.S.バッハ 編曲:吉田親家)

祖国の若者                  (詩:野間宏 曲:林光)
桑畑                      (詩:門倉訣 曲:関忠亮)
今日は日曜日                (詩:片岡輝 曲:池辺晋一郎)

真夜中を突っ走れ              (詩・曲:高見沢俊彦 編曲:青山義久)
恋人たちのペィヴメント           (詩:高橋研 曲:高見沢俊彦編曲:青山義久)
Sweat & Tears                (詩・曲:高見沢俊彦 編曲:青山義久)
Revolution                   (詩・曲:加藤登紀子 編曲:赤堀文雄)
HAPPY X'MAS                (詩・曲:ジョン・レノン 訳詩:山口みゆき 編曲:赤堀文雄)

        2部 合唱組曲「空に小烏がいなくなった日」  (詩:谷川俊太郎 曲:外山雄三)
 私が歌う理由
 空に小鳥がいなくなった日
 ひとりぼっちの裸の子ども
 ふるさとの星

組曲
「光の種子をまくとき」  (原詩:松代大本営をうたう合唱団 詩:石黒真知子 曲:林学
                                                     伴奏編曲:兼松千里)
 序章
 闇の声
 大殿祭
 何ごとも
 洗濯の老婆
 杏の木
 エピローグ・光の種子をまくとき

歌って愛して                   (詩・曲:横井久美子 編曲:青山義久)

チラシ(表)

ごあいさつ

プログラムより
 本日は、お忙しいなかようこそおいで下さいました。
 私たちは、今日の音楽会の準備を、昨年5月の定期音楽会が終わってすぐに始めました。
 この間、90年代から21世紀への新しい一歩である91年が明けるやいなや、第2次世界大戦以来の大規模な戦争−中東での湾岸戦争−を目のあたりにすることになりました。
 流れ出た油によって飛べなくなった海鳥、戦火のもとで傷つき死んでいく多くの市民、燃えあがる油田、戦争がもたらす悲惨さに、私たちは言いようのない胸苦しさを味わいました。自由や民主主義への抑圧と他国への侵略行為が、民衆の生活と生命や自然の営みを無残に踏みにじるものであることを、まざまざと示しました。
 このことを、私たちは他人事と見るわけにはいきません。
 現在の日本における生活や環境の破壊・民主主義や平和憲法への黒い動きがあります。
戦前の日本は、こうした抑圧体制が徹底され、非人間的な歴史的愚行がくり返されました。今日演奏します合唱組曲「光の種子をまくとき」も、その歴史の証言を取りあげたものです。
 今日の音楽会は、私たちの平和とみどりの地球を歌うことの楽しさ、豊かな音楽文化の発展を願って企画されました。
 優れた音楽家・うたごえ運動から生み出された多彩な作品を心をこめて歌いあげる今日の舞台や今後の私たちの活動にたいし、皆さまの暖かい御指導をお願い申しあげ、御礼のごあいさつとさせていただきます。
1991年5月23日 【関西合唱団団長 西恒人】

メッセージ

プログラムより
 ずいぶん昔からと言ってもよいほど、関西合唱団と守屋博之さんには長い長い間、たくさんの作品を、わがまま放題を言いっぱなしで御迷惑をかけながら演奏していただいた。
「空に小鳥がいなくなった日」と「ひとりぼっちの裸の子ども」も、そうして世の中に出して頂いたものだが、あとから2曲追加して組曲の形にしたものを、また演奏して下さるという。私も作品も久しぶりにふるさとに帰るような気持ちである。
【作曲家・指揮者 外山雄三】


 激動する世界。音楽の「洪水」。そんな中で「今、何をうたうか」と、今日の演奏会にむけ、何度も討論を重ねられた事でしょう。
 時代が求めるうた、人びとの暮らしの真実のおもいをうたにするために、旺盛なチャレンジ精神を発揮しつづける関西合唱団が、指揮者の守屋博之さんを先頭に、どんなメッセージをとどけてくれるかと、全国のうたごえの仲間も大いに注目し、期待しているところです。
演奏会の成功を心からお祈りします。
【日本のうたごえ全国協議会 幹事長 浜島康弘】


 いつも意欲的で斬新なレパートリーで、あざやかな演奏を聴かせてくれる関西合唱団に心から敬意を表します。
 今回は、私の作品をとりあげていただくことになり、身にあまる光栄と思っています。
 松代の洞穴に入った時、戦争の傷あとが今も警鐘として私たちにひびき、鬼気
迫るものを感じました。その驚きと意味をどこまで作品として表わせたか、自信はありません。
 合唱団のみなさんの情熱と守屋博之さんのすてきな指揮で、きっと立派な演奏になることを確信しています。
【作曲家 林学】


 長野の仲間と林学氏の力に支えられ、組曲の詩を創ったのは3年前でした。作詩を通して足元にある侵略の歴史を照射するという貴重な作業に携わるっことができました。
 今回この組曲が、関西合唱団の定演で上演されることを、大変光栄に感じています。関西合唱団の伝統と力量の大きさは、私のように"うたごえ情報"にうとい者にもとどいているからです。
 光の種子がこの地でも大きく育ち実ることを願ってやみません。
【詩人 石黒真知子】


 黒い泥岩とうす青いひん岩に覆われた「松代大本営」。その地下壕を掘ったひとりの朝鮮人労働者が、この3月亡くなりました。松代にただひとり残っていたこのひとは、「もう二度とこんな穴を掘るようなことがあってはならない」と、日本の若者たちに語ったことが思い出されます。
 憲法違反の自衛隊海外派遣が現実化してきたいま、私たちは太平洋戦争の巨大な証言者である「松代大本営」跡の保存と公開に、いっそうの努力をしなければならないと思っています。
 このたび関西合唱団のみなさんが、組曲「光の種子をまくとき」を公演され、長野合唱団の歌声をさらに広められる意義はまことに大きいといわなければなりません。信州・松代より公演の大成功を祈っております。
【松代大本営の保存をすすめる会会長 青木孝寿】

解説

プログラムより
松代大本営とは
 日本の敗戦が色濃くなった第2次世界大戦の末期、国民が戦火にさらされ、沖縄では本土決戦の防波堤として悲惨な殺りくが繰り広げられていた昭和19年11月から終戦迄の9ヵ月間、松代では秘密のうちに巨大な地下壕が掘削されていました。天皇制を護持し、軍の中枢部を移転させ本土決戦に備えようとするこの工事は全長13km高さ2.7m、投入した入力延300万入、死者不詳、総工費用2億円(現在の数千億円)、使役した朝鮮入労働者8000人に及び、とりわけダイナマイト、ツルハシ、トロッコ、モッコによる入海戦術で掘り進んだという最も危険なその最前線に朝鮮人労働者が使役されたという事実に過去の語られない暗い歴史を見る事が出来ます。強制的に故郷から狩り出されてきたアリランの若者のくやしさと望郷の想いは……軍の命令で土地を没収され、毎日のダイナマイトの炸裂音に悩まされた松代住民の苦悩は・・・どんなだったでしょうか。1985年、篠ノ井旭高校の生徒がこの地下壕を調査、その保存と平和祈念館の建設を市に呼びかけた運動は、多くの市民の共感を呼び、その完全保存をすすめる市民運動のきっかけとなりました。
初演 1989年5月13日長野県県民文化会館大ホール「松代大本営」をうたう合唱団