定期演奏会の紹介

秋の音楽会の紹介

 秋の音楽会

演奏日時 1993年10月31日(日)午後3時開演
演奏会場 大阪府立 青少年会館文化ホール
指   揮 守屋博之
ピ ア ノ 門万沙子
出   演 関西合唱団/’93日本のうたごえ祭典記念合唱団/
混声合唱組曲「悪魔の飽食」をうたう合唱団/
神戸市役所センター合唱団/カンタータ「悪魔の飽食」をうたう市民合唱団
ス タ ッ フ 溝口隆徳(舞台監督)

演 奏 曲  1部 ヴェルディの初期の歌劇合唱作品
 イェルサレム!イェルサレム!          歌劇「十字軍のロンバルディア人」第三幕より
 カスティッリャの獅子が目覚めんことを    歌劇「エルナーニ」第三幕より
 ああ主よ、あなたは大いなる約束で      歌劇「十字軍のロンバルディア人」第四幕より
                            (訳詩:山口みゆき)

混声合唱とピアノのための組曲「忘れっぽい人に」より (詩:中桐雅夫 曲:外山雄三)
 T.「想像力」
 V.「白いハンカチ」

     【関西合唱団/守屋博之(指揮)/門万沙子(ピアノ)】

        2部 母なる故郷                     (詩:入江晃 曲:木下航二 編曲:高平つぐゆき)
うたごえよ明日のために             (詩:片羽登呂平 曲:林光)

名も告げずに                    (詩・曲:G.ムスタキ 編曲:青山義久)
4月のカーネーション                (曲:G.ムスタキ 訳詩:横井久美子 編曲:青山義久)

墓標                          (詩:峠三吉 曲:外山雄三)
おやすみ                       (詩:デサンカ・マクシモビッチ 曲:外山雄三)

鐘の合唱                       (曲:レオンカヴァルロ 歌劇「道化師」より)
美しく青きドナウ                   (曲:J.シュトラウス 編曲:斉藤秀雄)

     【'93日本のうたごえ祭典記念合唱団/守屋博之(指揮)/門万沙子(ピアノ)】

        3部 混声合唱組曲「悪魔の飽食」        (原詩:森村誠一 編詩:神戸市役所センター合唱団 曲:池辺晋一郎)

     【関西合唱団/混声合唱組曲「悪魔の飽食」をうたう合唱団/神戸市役所センター合唱団/
        カンタータ「悪魔の飽食」をうたう市民合唱団/守屋博之(指揮)/門万沙子(ピアノ)】

チラシ(表)

ごあいさつ

プログラムより
 秋真っ只中何かとお忙しいところ、本日の音楽会にようこそおいで下さいました。
私たちが毎年5月に開いております定期音楽会は、文字どおり関西合唱団の舞台が中心になっておりますが、今回の音楽会は3部から構成され、演奏者もそれぞれ異なるだけでなくプログラム面でも大変充実した内容をもっており、皆様も大いなる興味と期待をもってかけつけて下さったことと存じあげます。
私たちの運動が、より多くの皆さんに受けとめられ広がっていくためには、音楽そのものへの共感〜感動の共有〜がなければならないことは言うまでもありません。
そして、時代の底に流れているものを敏感に受けとめ音楽の力をその中で磨いていく時、共感をより深め運動を切り開いていくことになるのは、うたごえ運動の45年が示しています。
関西合唱団・記念合唱団・合唱組曲「悪魔の飽食」の演奏による今日の音楽会は、現在の運動へのこうした課題に正面から挑戦しつつ、平和への願いをこめ皆様にお贈りいたします。
皆様のご感想・ご意見をよろしくお願い申し上げお礼のご挨拶とさせて頂きます。
1993年10月31日 【関西合唱団団長 西恒人】

メッセージ

プログラムより
関西合唱団秋の音楽会のプログラムをみて、関西合唱団の45年の歴史の重みを感じないではいられない。
関西合唱団の歴史は、うたごえ運動そのものの歴史であり、いま、うたごえ運動が何を考え、何をうたい、そして、どういう事を音楽的な課題としているのか、など沢山の事が、この秋の音楽会から学びとる事が出来るに違いないと期待に胸がふくらむ、しかも、この音楽会には、全国の精鋭があつまった日本のうたごえ祭典記念合唱団が参加し、うたごえ運動そのものの姿を一層鮮かに示してくれるに違いない。
激動する国の内外の状況の中だからこそ真の平和とは、人間のしあわせとは、をうたでもって問いかけ、それがあくまで音楽として、私たちの日々のくらしの中での真実のおもいと重なって豊かなものである事を心から期待しないではいられない。
日本のうたごえ運動の宝、関西合唱団の更なる前進を心から願って
【日本のうたごえ全国協議会 幹事長 浜島康弘】

曲 目 解 説

プログラムより
●ヴェルディの初期の歌劇合唱作品について
ジュゼッペ・ヴェルディ〜Giuseppe Fortunio Francesco Verdi(1818〜1901)は、イタリアの生んだもっとも優れた作曲家の一人であり、イタリア・オペラに巨大な足跡を残した。
ヴェルディの生まれたころ、イタリアには統一した国家がなく、中部の法王領の他、シチーリア王国、パルマ公国など、八つの王国から成り立っていたか、その多くはオーストリア帝国の直接間接の支配下にあった。炭焼党(カルボネリーア)などの活動もあって、ヴェルディが作曲活動を開始したころには国家統一と独立、自由への人びとの願いは、思想弾圧の強い嵐にもかかわらず民衆の総意となってしった。
このような情勢のなかでつくられた歌劇「ナブッコ」(1842年初演)は、旧約聖書にもとずく内容だが、力強い合唱と愛国心に満ちたものでミラノの人々に大きな刺激と勇気を与えた。この作品の成功で彼は歌劇作曲家としての地位を不動のものとした。この歌劇の中の合唱「行け、わが思いよ、金色の翼にのって」は、イタリア民衆の志気を鼓舞した曲として愛され、小学校の教斜書にものっているという。
人々はヴェルディに愛国的な作品をもとめ、それにこたえて翌1843年には「十字軍のロンバルディア人」がスカラ座で初演された。「イェルサレム!イェルサレム!」は第三幕幕開きの合唱で、苦難の旅の果て聖地を目のあたりにした巡礼たちの思いを感動的にうたう。「ああ主よ、あなたは大いなる約束で」は、第四幕第二場で故郷を思ってうたう合唱で、この曲も民族独立の悲願がこめられた歌としてイリア全土で愛唱された。十字軍を題材にとりあげながら、劇中でプリマに「略奪し殺戮することを神はよろこばない」と十字軍の侵略的性格について歌わせていることなど、ヴェルディの視点には刮目すべきものがある。「カスティッリャの獅子が目覚めんことを」は、フランスの文豪ヴィグトル・ユーゴーの戯曲を原作とした歌劇「エルナー二」(1844年初演)の第三幕で、スペイン国王ドン・カルロに反逆を企てる者たちによってうたわれる。この歌もイタリア人にとっては第二の国家ともいわれる愛唱曲である。
●「忘れっぽい人に」より,
T「白いハンカチ」 V「創造力」
中桐雅夫の詩集から四つを選んで小さな組曲を作り'94年5月の音楽会で演奏する予定である。戦争と平和の問題にこだわりつづける外山雄三氏の最新作。鋭い感覚で戦争を告発する詩人のことばに外山氏の研ぎすまされた音楽がつけられ、わたしたちに強くよびかける内容となっている。
●母なるふるさと
うたごえ運動初期1950年代の愛唱歌。作曲者の木下航二は当時日比谷高校の先生。他に「原爆許すまじ」などの作品もある。高平つぐゆきの編曲で、現代によみがえった。
●うたごえよ明日のために
やはり、うたごえ運動初期の愛唱歌。その内容と音楽はみずみずしく生き生きとしていて、今も新鮮である。作曲家林光氏が、「たたかいのなかに」(1952)につづき翌53年に作曲した。70年代なかばに作曲者自身により混声合唱に編曲された。
●名も告げずに
●4月のカーネーション
2曲ともギリシャ人であるシンガーソングライダー、ジョルジュ・ムスタキ(1934〜)の曲。ムスタキは、50年代末にエディット・ピアフ、イプ・モンタンらと知り会い、彼らのための曲をたくさん書いた。1960年代になって歌い手としてもデビューした。彼の作品にはしいたげられたものへの共感と、自由への熱い思いをうたった歌も多ぐ「四月のカーネーション」(原題・ポルトガル)は、自由をかちとったポルトガルをうたい、まだ圧制に若しんでいる人たちをはげます歌となっている。
●墓標
外山雄三による混声合唱組曲「一輪の花のほかは…」のなかの一曲で、峠三吉の詩をもとに作曲された。外山氏のたくさんの反核作品のなかでもっとも広くうたわれているものの一つ。
●おやすみ
セルビア生まれの女性詩人、デサンカ・マクシモビッチ(1898〜)のこの詩は、朝日新聞1993年元旦号にのっていた。「こどものねむりのなかにだけ、星のきらめく夢がある。世界はおしだまっているばかり。」とうたう内容の痛切さは、かぎりなく美しく静かな曲想のなかで一層わたしたちの胸に迫る。1993年3月27日、作曲者自身のピアノ、守屋博之指揮・三多摩青年合唱団により初演された。
●鐘の合唱
レオンカヴァルロ作曲の歌劇「道化師(パリアッチ)」
は、マスカーニの「カヴァレリア・ルスチカーナ」とならんでイタリアのヴェリズモ(写実主義)・オペラの代表作といわれている。「鐘の合唱」は、ドラマの本筋とは関係なく色彩的なコーラスを聞かせるために挿入された痛快な曲である。
●美しく青きドナウ
ワルツの王、ヨハン・シュトラウス2世(1825〜99)の代表作。オーケストラの演奏で知られるが、最初は、男声合唱のために作曲された。1866年、オーストリアとプロシアの間で戦争がおこり、ウィーンの人びとが暗い気分になっていたとき、それを励まそうと作曲されたといわれる。今回の演奏は、故斎藤秀雄氏が東京放送合唱団のために編曲した楽譜による。
●悪魔の飽食
神戸市役所センター合唱団の委嘱で森村誠一が詩を書きそれをもとに池辺晋一郎が作曲。1984年神戸市役所センター合唱団と守屋博之指揮により初演された。加害者としての日本帝国主義のすがたを抉りだしたこの作品は大きな反響をよび、その後も各地で演奏されている。

「悪魔の飽食」731部隊とは
戦前、日本陸軍(関東軍)は、天皇の勅令(帝国議会を通さずに発せられた命令)によって、極秘軍事組織を発足させた。
終戦直前「25202」の暗証で呼ばれたこの組織は、別名を「関東軍防疫給水部本部満州第731部隊」と名乗り、部隊長、石井四郎軍医中将の名を取り「石井部隊」とも呼ばれた。本部は平房(ピンファン)付近に設けられた特別軍事地域にあり、厳重な軍機密匿のもとに約2,600人余の日本人医師、研究者、助手を軍属として動員、1945年8月の終戦直前まで細菌戦の実施研究をおこなっていた。
部隊施設の中心に2棟の2階建特設監獄があり、対日抗戦で捕虜になった八路軍兵士や、ハルピン在住ソ連人をはじめ、多数の中国人、ソ連人、モンゴル人、朝鮮人が収容されていた。捕虜たちはマルタ(丸太)と呼ばれ、生きたまま細菌実験や生体解剖の材料とされ、少なくとも3,000人以上が犠牲になった

【関西合唱団企画委員会】