松原千振先生の合唱講座   

      名指揮者による合唱講座U

日程  2005年2月6日(日) 午後1時30分〜4時30分 譜読み練習12時30分〜
場所  
大阪グリーン会館

 今年度最後の日曜講座は、東京混声合唱団の指揮者、松原千振先生の合唱講座です。2月6日(日)に大阪グリーン会館で行われました。
今回はさらに参加者が増えて会場一杯の120名近くの参加者で会場は埋まり、音楽に関する多方面なお話とハーモニーを作り上げる実践的な合唱講座が行われました。

 今回も会場準備のために11時45分に演奏教育部員は集合するはずが・・・。おまけに前日使ったテーブルが会場いっぱいに。2人で片づける羽目に。今回も早めに来て頂いた方と一緒にに椅子を並べていただく結果となりました。(申し訳ありません)。

 午後12時30分より譜読みの開始。5種類の楽譜を事前に松原先生は送って頂いたので、関西合唱団の指揮者 守屋さんの指揮、門さんのピアノで譜読みを開始。続いて副指揮者のYさんの紹介で松原千振先生が登場。

スタッフの集合時間にはたった2人だけ。まずは会場の机の片づけ。 早めに来て頂いた方と椅子だし。 バスのFさんはビデオカメラの準備。今回は照明も2つ用意しました。
12時30分前の受付は参加される方でいっぱいになりました。 毎回、休み時間に好評のコーヒーのコーナーの準備も。 徐々に会場は埋まっていきます。5種類の楽譜を歌えるようにすぐに譜読みの練習に入ります。
守屋さんの指揮で譜読み。ピアノは門さんです。「本当にこの曲全部をやるのだろうか」「ついていけるかな」との団員からの心配の声も。でも、会場の方はどんどんついていきます。 1時間の譜読み練習終了。1時30分まで休憩。会場は8割り方埋まりました。 松原千振先生がいらっしゃいました。ロビーで指揮者の守屋さんと、副指揮者のYさんとでうち合わせ。
副指揮者のYさんが日曜講座の開会と松原千振先生の紹介をします。松原先生からは並びをS,A,T,Bの順から「男女の声が良く混じるために男声が後ろに一列になって欲しい」とご指摘があり、変更に。これって関西合唱団の日頃の並び方です。 松原千振先生です。今回の5種類の楽譜(見開き6枚)について「単純でかつ楽しんでもらえる曲を用意した」「合唱に国境はない。言葉がわからなくても良いものには興味が湧く。調べてみようと思うはず」と。 そこでインドネシアの曲「ソレラム」。「どんな曲だろうと興味を持つことで本質に迫っていく。決して言葉で壁をつくらない」。う〜ん、外国の曲を歌う時、いつも言葉の問題で不満が団員から出てくる我が団は変わらなくては!
会場もずいぶん埋まりました。次に発声をかねてカデンツァ。「ソプラノはベースの音を良く聞く」と互いに音を聞き合うことを注意。そうです!我が団はここのところを学ぶ必要があります。 再度「ソレラム」。「バリ島の女性のゆっくりした踊りの音楽。♪ラム〜で伸ばす。いろいろな和音が出てくる。不協和音がたくさんあり変化に富む。」「アルトは自分をいい男だと思って」「男声の5度の和音は良い。男声合唱を30年も続けていてやめられない。不治の病だ?」とも。なんとなくわかる気がします。 再度、カデンツァ。S,A,T,Bの順に半音ずつ下がってくるカデンツァでは、「ピアノを使わずに耳を育てて欲しい」と。また、「和音を考えていくと、音律や数学の歴史をたどっていくことになり、ノイローゼになることも」。今日の練習曲はすべてア・カペラ。先生が直接ピアノで音をとってくれます。
「ソプラノは相手を押しのけようとする気持ちがあるが、土の上に乗る花の気持ちで声を出して欲しい」。「我々は不協和音の方がとりやすくなってしまった。バッハはすべての曲の最後は長調の和音で終わっていた。レねっさんすの時代から不協和音は解決のために使われた。これをフランスのドビッシーが変えてしまい、我々の音楽の常識にしてしまった」。音楽の歴史にも触れながら音楽を深く立体的に解説して頂けます。 ここでもう1時間半が経ってしまいました。休憩時間をとります。人によってはコーヒーのコーナーへ。 ロビーで先生も休憩。副指揮者のYさんと接待役のソプラノOさん。
休憩時間の終わりにソプラノのYさんとバスのFさんで第70回定期演奏会のための関西合唱団とともに歌う合唱団員募集の宣伝。 次はエストニアのアルボ・ペルトの曲。なんとドレミの順に各パートが歌っていくだけなのに不思議な響きになる曲。「作曲と言っていいのかどうか。ニュアンスを楽しむのにはよい曲。パート別にやると難しい。スタッカートでやってもおもしろい。その音程にあたるのかどうか、事前に頭で音を用意しておく。他のパートの曲を歌っていないと音は取れない」。 続いてザビエル・ブストの“Ave Maria”。「今時こんな書き方をする人がいるんだんなあと思った。終わり方が不協和音。現代音楽の難解さに疑問を持った書き方。混迷した音楽の中から単旋律を引き出してくる作業をしている」。「練習方法として他のパートを歌ってみる。すると早く覚えられる。また、縦を歌う。2小節に7つの違ったハーモニーがある。この一つ一つを丁寧に歌ってみる」。
再度、カデンツァ。今度は楽譜にはなく、先生が各パートの音を教えて頂き、歌いました。ソプラノ・テノールは5度で半音ずつ下がり、バスはとびとび。アルトは倍の長さで下がっていきます。「降りる時は沢山降りること。耳を慣らすこと。やっていく打ちに自分たちのハーモニーができてくる。できたら、次は半音高いところから始めてみる。時々、自分の合唱団でもやっている」 最後に“Shenandoah”。「臨時記号と転調が無いめずらしい曲。アメリカ民謡で川下りの船乗りの歌。労働歌です。ドレミでファの音がない歌。ドミソ、ドミソの2階建てになっている。実は海辺の民謡は半音、山辺の民謡は全音の関係がある。」「音楽にはいろいろな切り口、興味の持ち方がある。理科系の人が集まった合唱団はうらやましい。周波数の分析ができる」。ムムム、筆者は典型的な理系ですが・・・。 「ポリフォニーも政治思想の現れ。15世紀にネーデルランド(オランダ)で生まれた共和制の影響で、音楽の各パートを平等に主張させようとした思想である。いろいろな学問が音楽に関わってくるので調べるとおもしろい」。
続いて質問のコーナーに。バスの方からビブラートについて質問があり、「女性の皆さん、ビブラートを取れといわれたことはありませんか。一生懸命歌っているのですが、口を動かしすぎて力が入ってしまう。そこでこう言っています。無駄な労力を使いすぎない。北欧の人達は寒くて口を大きく開けない。それでわかったんです。他に、小さい声で歌う。結局聞いていないから」。「3大テノールもビブラートが少ないのはパバロッティ。口は小さく開けている。カレーラスは大きく開け、ビブラートも大きい」。我が団でも大変参考になるご指摘です。 テノールの方から合唱団の譜読み練習で「他のパートの音を聞くことの重要さ」について質問が出て、「原則、譜読みはいらない。他のパートを聞く必要がある。他のパートに歌わせるとうまく歌うことがある。それは聞いているから。ソプラノ・アルトのバランスが悪い所ではメゾソプラノが動く。隣のパートも歌える力は必要。自分のパートだけで大変とういう考えは間違い」。そうです!我が合唱団もこの姿勢を学んで欲しい! 女性の方より先生が途中で後で話しますと言われた鉄腕アトムのお話しをして欲しいとのリクエストに、「鉄腕アトムの前奏。同じ音程お重ね合わせていくと永年であったり不安であったりのイメージができる。短3度は不安定」と、先ほどのカデンツァで練習した内容との関連をお話しされました。
最後に司会のYさんから「音楽史から始まり、いろいろヒントをいただけたので、みなさんの音楽がシェイプアップできたのではないでしょうか」。「来年の日曜講座の時期・内容は未定ですが是非ご期待下さい」と。 先生からは「スウェーデンから素晴らしい合唱団が来日します。10月16日の夜にシンフォニーホールでコンサートをしますので是非ご期待下さい」と。う〜ん、万難を排して参加しましょう。 みんなで椅子を片づけて終了です。ご苦労様でした。これで今年の日曜講座も終わりです。

多方面のお話を交えながらあつく音楽を語られました。そして、次々と6枚ある楽譜から様々な音楽を、ハーモニーを紡ぎ出して頂きました。

特にハーモニーを様々なカデンツァや外国の音楽を使って教えて頂き、そのハーモニーをどう出すのか、どう聞くのか、大変勉強になりました。また、先生は「現在、フィンランドで仕事をしている。フィンランドとはフィン、つまり終わりの国の意味。一番古い合唱団でも100数十年の歴史。シベリウスは古典になっている。キリスト教が伝わったのが11世紀。宗教音楽も入ってきた。しかし、すぐに北ヨーロッパなのでルター派のプロテスタントによりグレゴリオ聖歌は倉庫に放り込まれてしまった。その楽譜が羊皮紙の本の厚い表紙の中に使われていた。1887年にそこから古い楽譜が見つかり、現在1万2〜3千曲も見つかっている。しみや焼け跡などが残った楽譜だが、読める人がいないため、現代のグレゴリオ聖歌に書き直している」とのことでした。何と国際的な!

この他にも松原先生はたくさんお話しをされたのですが、このアルバムでは断片的な紹介しかできなかったことをお詫びします。なお、今回のビデオもあります。ご希望の方はご連絡下さい。
大きな写真をUPしました。(2005.2.28)【テノール S】